材木座・潮神楽(汐まつり)~鎌倉・五所神社(2019年)~

材木座・潮神楽(汐まつり)~鎌倉・五所神社(2019年)~

1月11日に催された鎌倉・材木座の漁業に携わる方々のお祭り「汐まつり」において「潮神楽」が執り行われました。晴れ渡った空の下、南正面には相模湾が青々と広がり、稲村ヶ崎の向こうに雪を頂く富士が浮かぶ絶好の舞台で奉納される「鎌倉神楽」には格別の爽やかさがあります。また、普段神社の拝殿内で行われる神事もしっかりと目にすることができ、とても勉強になりました。
◆鎌倉神楽◆
鎌倉神楽は、今から800年くらい前に、京都・石清水八幡宮より伝わったもので、元々三十六座ほどありましたが、現在は湘南鎌倉地区のご神職有志で構成される「湯立神楽保存会」を中心に十二座が残っております。
鎌倉神楽では、神主さんが釜で沸かした湯を激しくかきまぜますが、昔はそこに立ち上る湯玉の様子からその年の吉凶を占っていたそうです。現在では、そのノウハウが失われてしまいましたが、演目の一つである「湯上」において桶に汲み入れたお湯を神前に献上したり、「笹舞」において笹の葉を湯に浸し参拝客の頭上に散布することで皆の無病息災を祈るなど、釜の湯を中心に儀式が進んでいくことから「湯立神楽」「湯花神楽」とも呼ばれています。

「潮神楽」で奉納された「鎌倉神楽」、及び御神楽の後行われた材木座の左義長「どんどん焼」の様子は、動画をYouTubeにアップしておりますので、ご覧ください。

前半(初能・御祓・御幣招・湯上・中入)

後半(掻湯・笹舞・射祓・剣舞・毛止幾)

「潮神楽」開始前の材木座海岸

材木座海岸に着くと、神社境内での奉納とは異なり、とても広く結界が張られ神楽場が設けられていました。

防波堤には、鮮やかな大漁旗。

「どんどん焼き」に持ち寄られた神札や正月の縁起物が積まれていました。

稲村ヶ崎の向こうには、真白な富士山が見えます。

「鎌倉神楽」の供物が祭壇の上に並び、神様の「憑代(よりしろ)」となる紅白の御幣が掲げられていました。


「鎌倉神楽」で使用する太鼓、天狗と山神の面(剣舞毛止幾で被ります)、黒烏帽子、笏です。


お客様も集まってきました。

「潮神楽」に先立つ神事

降神の儀

「降神詞」が唱えられ、五所神社のご祭神を紅白の御幣にお招きします。

修祓(しゅばつ)

祭壇、玉串、ご神職、参列者等を御祓いします。



警蹕(けいひつ)

斎主が「おーーー」と発声し、参列者に神様のお出ましを告げます。

献饌(けんせん)

神様に、供物を奉げます。ここでは、御神酒の瓶子の蓋を開けることで献饌を表現しています。

祝詞奏上(のりとそうじょう)

斎主が、祝詞を奏上します。

玉串拝礼

まず斎主が、玉串を奉げます。その後、五所神社氏子代表他、参列者の皆様が順に玉串を奉げます。






「天王唄」奉納

鎌倉材木座天王唄保存会の皆さんが、天王唄を奉納します。

「潮神楽」

「鎌倉神楽」の演目が順に奉納されました。

初能(はのう)

鎌倉神楽では必ず奉納される「座」です。米を乗せた白扇と神楽鈴を持ったご神職が舞い、四方に米を散供し、清らかな神楽場を造ります。


御祓(おはらい)

二本の小さな御幣と神楽鈴を手に持ち御神酒瓶子を小脇に抱えたご神職が湯釜に向かい、湯釜の前に二本の御幣を立て、湯釜に御神酒を注ぎます。その後、祭壇に戻り、威儀物、神楽場、湯釜、神具類、参列者を御祓いします。



御幣招(ごへいまねき)

御幣と神楽鈴を持ったご神職が舞い、神の憑代となる紅白の御幣に火産霊神(ほむすびのかみ)・罔象女神(みづはのめのかみ)を、またその下の青と黄色の御幣に産土大神(うぶすなのおおかみ)を、お招きします。最後に「恩頼(みたまのふゆ)」により神様のお力を授かります。


湯上(ゆあげ)

まず、笹を束ねた「湯たぶさ」と神楽鈴を持ったご神職が舞います。その後湯釜に進み「湯たぶさ」を湯に浸し、祭壇に献じます。


中入(なかいれ)

ご神職は狩衣を脱ぎ「掻湯」以降の後段に備えます。同時にご神職と参列者には御神酒が下されます。


掻湯(かきゆ)

いよいよ湯花神楽・湯立神楽とも呼ばれる鎌倉神楽の山場です。御幣と神楽鈴を持ったご神職が舞い、祈念をこめた御幣で沸騰するお湯を掻き廻し、立ち上る湯玉「湯の泡」のあがり具合で今年の作物の豊凶を占います。



笹舞(ささまい)

ご神職が「湯たぶさ」を手に舞を演じ、湯釜に進み「湯たぶさ」をお湯に浸し四方に振るい「しぶき」を撒きます。この神の息吹は、この世のありとあらゆる物に遠く振り注がれ、豊かな実りを約束します。


射祓(いはらい)

神の宿る弓矢に込められた力で四方の邪気を射祓い、天下泰平・招福除災を祈念します。縁起物の矢を、四名に限ってではありますが頂けるということでも人気のある演目です。神の憑る祭壇に向かう五本目の矢は、射る動作だけで実際には矢は射ません。


剣舞・毛止幾(けんまい・もどき)

神楽の終わりに演じられます。天狗が鉾を持って舞い、空中に九字真言の最後の一文字「前」の字を切り、豊年万作・大漁満足・天下泰平を祈念し、邪気・邪霊を鎮めます。九字真言は、昔の忍者物の映画で「臨・兵・闘・射」とやっていたアレです。また、この途中に黒面の山の神が現れコミカルに舞います。天狗の所作を邪魔するなどトリックスターの役割りを演じながら、天狗と共にミカンを散供します。今回は、材木座幼稚園の園児の皆さんもいらっしゃいました。






「潮神楽」の後の神事

撤饌(てっせん)

供物をお下げします。こちらでは、瓶子の蓋を閉めることで撤饌とします。

昇神の儀

「憑代」に降臨なさった神様にお帰りいただきます。


左義長「どんどん焼」

他の地区と比べて少し早目ではありますが、神札や正月の縁起物を焚き上げる「どんどん焼」が行われます。ご神職が、湯釜の火を湯たぶさにいただき、着火します。



最後までご覧いただきありがとうございました。この日は、気温も低くはなく、「潮神楽」の間中、心地良く過ごすことができました。普段見慣れているはずなのに、この日はあまりにも見事な眺めでしたので、御神楽の前後に富士山の方を向いていらっしゃる参列者の方が多いのが印象的でした。

ギャラリー

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