鎌倉まつり~庖丁式(2019年)~

鎌倉まつり~庖丁式(2019年)~

鎌倉まつり二日目の4月15日(日)に鶴岡八幡宮・舞殿にて奉納された庖丁式では、素材の魚に一切手を触れることなく、庖丁と真魚箸(まなばし)のみを用いて、 古式にのっとり巧みにさばいていく技術を見事に披露していただきました。その流儀は四条流と呼ばれ、四条中納言・藤原山蔭により平安時代前期に創始され、その後藤原北家・魚名流の藤原隆季を祖とする四条家に代々受け継がれてきたもので、今回その技を披露する四条心流はその流れを汲んだ一派となります。

境内の様子

庖丁式が行われる舞殿の正面には、高坏に二本の瓶子と白い布を掛けられた俎板(幅三尺六寸五分、奥行・二尺四寸)が置かれ、東側の楽人席には、式中に奏される「萬代舞(よろづよまい)」の楽譜が準備されていました。舞殿の東南には、庖丁、真魚箸、本日捌いた鯛の身を盛る皿が並んだ案が置かれていました。

舞殿南側
瓶子の乗った高坏と俎板
「萬代舞(よろづよまい)」の楽譜
道具類

この日は、鶴岡八幡宮の四月の月次祭(つきなみさい)の日で、祭礼を終えたご神職が、本宮より大石段を退下なさるところに居合わせました。

今回の庖丁式の式題は「花見之鯛」で、横浜在住の料理人の団体「横浜萬屋心友会」及びそこに付帯して「四条心流」の技法・式次第に則った庖丁式を実践する「四条心流会」による奉納となります。

持出人が、本日の主役となる大きな鯛を三方に捧げ持ち、舞殿に運び込みます。

庖丁式までの次第

社務所を出発した式に参加する皆さんは「祓戸(はらえど)」で御祓いを受けた後、舞殿に向かいます。

後見人と三人の介添人が、所定の場所に座ります。後見人は何時でも庖丁人に取って代われるよう、同じ白の狩衣(かりぎぬ)に黒の立烏帽子の装束をまとっていらっしゃいます。

後見人の島田和気男さん
介添人のお三方

庖丁式

ご神職の一礼の後、献饌。

笙が奏でられいよいよ始まりです。

四条真流師範による「表白文奏上」の後 「俎板開き」で、最初の介添人が、俎板にかかる白布を取り除きます。

続く「俎板清め」では、二人目の介添人が俎板の四隅(各々の隅は、左上から時計回りに「宴酔」「朝拝」「四徳」「五行」と名付けられています。なお中央は「式」と呼ばれます)に塩を盛ります。さらに棒に挟んだ奉書紙を使い、四隅の塩で俎板の上を掃き清めます。

続いて、「刀三方の儀」 です。最初の介添人が庖丁刀、真魚箸等を所定の場所に置いていきます。

さらに「真魚三方の儀」です。こちらで三人目の介添人が、料理する鯛と飾りの花を所定の場所に置きます。

庖丁人が昇殿し、襷をかけるなど身支度を整えます。さらに祭主と後見人に一礼。

花を脇に除け、庖丁刀と真魚箸を検めます。

鯛の頭と尾を結ぶ紐を切り、いよいよ鯛を捌いていきます。

まずは、頭部に箸を突き立て、庖丁刀を寝かせて背びれを削ぎます。

頭を落とし、身を捌いていきます。尾を切り落とし、庖丁刀の腹にのせて、俎板の上の所定の場所に置きます。

真魚箸を検分し、花を整えます。

料理を終えた庖丁人が一礼し、襷を解きます。

庖丁人が、奉納する鯛の切身を白皿に盛りつけます。

鯛の切身を盛付けた皿を神前にお供えします。

参列者の皆さんが玉串拝礼を行います。

ご神職が、撤饌し一礼します。

最後までご覧いただきありがとうございました。実は鎌倉まつりの行事の中で、庖丁式につきましては、あまりアナウンスされておりませんでしたが、今年は貴重な儀式に立ちあえてとてもラッキーでした。