禅居院◆鎌倉・建長寺・境内散歩◆

禅居院◆鎌倉・建長寺・境内散歩◆

石屏山(せきびょうざん)禅居院は、北条高時の招請に応え中国・元より来日した「清拙正澄(せいせつしょうちょう)」(諡号・大鑑禅師)の鎌倉における塔所として開創された建長寺の塔頭で、天下門前の県道を渡った反対側(南側)にあります。
大鑑禅師は、禅僧が守るべき規範及び儀規である「清規(しんぎ)」に精通し、唐の名僧・百丈懐海(ひゃくじょうえかい)が定めた「百丈清規」をもとに、日本の実情に即した 「大鑑清規」を著しました。また建長寺の他、浄智寺、円覚寺、建仁寺、南禅寺の住持も歴任するなど臨済宗の中で重きを成し、禅居院は大鑑派と呼ばれるその法統の東の拠点と位置付けられています 。禅居院は、現在一般公開されていませんので、拝観を希望する場合は「梅かまくら寺社特別参拝」等の機会を利用させていただくことになります。

なお禅居院のご由緒、ご朱印、年中行事、季節の花々、アクセス等につきましては、以下のリンクをご覧ください。
⇒禅居院

※写真をクリックすると拡大します。

禅居院の魅力

◎特別参拝日が待ち遠しい境内一般公開を拒む本物感

◎臨済宗の歴史に深く刻み込まれたきんの開山・大鑑禅師という存在

◎東慶寺・水月観音(重要文化財)と並び称され鎌倉を代表する遊戯坐像「御本尊・聖観音菩薩半跏像」

山門付近の様子

お盆の頃、建長寺天下門付近から見た禅居院の山門は、こんな感じ。

3月の上旬に「梅かまくら寺社特別参拝」でお参りした時の山門は、こんな感じ。足元に案内板が置かれていました。

山門には額が掲げられていますが、文字が読み切れません。

山門のすぐ右手に「梅州庵」の額が掛った新しい建物があります。おそらく建長寺住持を務めた「中巖円月(ちゅうがんえんげつ)」の塔所であった旧・梅州庵の名を引き継いだものと思います。

山門の右脇には、お地蔵様がいらっしゃいます。

ご本堂の様子

拙い図となってしまい恐縮ですが、2019年の「梅かまくら寺社特別参拝」当日のご本堂の内部は、こんな感じ。

須弥壇

まず正面中央には神奈川県指定文化財の御本尊・聖観音菩薩半跏像が鎮座します。日本では主に鎌倉地域で見られる宋朝様式の遊戯像で、玉眼とリアルな衣紋にゆったりとした佇まいが特徴的です。同様の作風は重要文化財の東慶寺・水月観音像にも見られますが、禅居院の御本尊は、普段公開されることがないため、東慶寺・水月観音像と比べるとあまり知られていません。水月観音像ほどには崩れていない姿勢が凛々しく映ります。

禅居院・聖観音菩薩半跏像(「鎌倉の文化財」より)

御本尊の向かって左手が開山・大鑑禅師の頂相です。残念ながら写真ではご紹介できませんが、大鑑禅師にご縁のある複数の寺院で、頂相像(又は画)が残されています。
なお、大鑑禅師が残した 遺偈(ゆいげ)は、現在、鎌倉・常盤山文庫に所蔵され、国宝に指定されています。

また、大鑑禅師が整えた清規は、禅居院の開基・小笠原貞宗の家芸である小笠原流礼法に繋がり、室町以降の弓術・茶道における所作の範となっています。

御本尊の右手が厨子に納められた摩利支天像となります。この摩利支天像は大鑑禅師の持仏で、来日に際して中国皇帝から託されたものと云われています。なお大鑑禅師の京都の塔所である建仁寺・禅居庵の摩利支尊天堂にも大鑑禅師の持仏と云われる摩利支天像があり、どちらが本物か悩ましいところです。
建仁寺・禅居庵の摩利支天の前立像は、こんな感じ。

建仁寺・禅居庵・摩利支天像御前立(禅居庵 サイトにリンク)

内陣

中央に「大悲閣」の扁額が掲げられています。須弥壇の手前上部に掲げられた額ですので「大悲閣」で正しいとは思いますが、私には 「閣」とは読めず「咒」のように見えました。また内陣奥の左右に二幅一対の書が掲げられています。向かって右に「如来説法如来雨」、左に「三草二木皆萌芽」とあります。これは法華経にある「三草二木の譬え」に依拠するもので「如来の説く法は、万物に遍く降り注ぐ。多様な草木も雨を浴びて等しく育つように、どのような境遇の人でも如来のお導きにより何れは等しく悟りに達する。」というような意味になります。
内陣の天井には、豪華な金彩で「宝相華紋」、内陣手前の天井には、花鳥図が描かれています。 内陣手前の柱には、向かって右に「一二三四五六七」、左に「いろはにほへと」れた銘板が掲げられていますが、こちらは檀家有志が奉納されたものだそうです。

向かって左奥

こちらには二幅一対の建長寺管長・吉田正道老師の書が掲げられており、向かって右に「慈眼視衆生(じげんじしゅじょう)」、左に「福聚海無量(ふくじゅかいむりょう)」とあります。
これは、観音経の一節で「観音様はいつも慈しみを持って人々を見守ってくださる。その幸いの大なることは、まるで海のように計り知れない」との意です。

向かって右奥

こちらは阿弥陀曼荼羅の掛け軸を中央に、左右におそらく勢至菩薩と観音菩薩と思える掛仏を配しています。

南の稲荷社

こちらは、禅居院・東側の崖上にある稲荷社です。建長寺には、東西南北の鎮守として稲荷社が祀られており、こちらは南方を鎮めるお社だそうです。なお建長寺の四方鎮守と云えば、東・八幡、北・熊野、西・子ノ神、南・第六天と聞いておりましたが、それとは別に稲荷社による結界があるようです。


禅居院・東崖上 の稲荷社(建長寺境内から正面を撮影)

最後までご覧いただきありがとうございました。また春から夏にかけて、手入れの行き届いた芝が青々と広がる庭園を歩いてみたい気がします。