鶴岡八幡宮・白旗神社~文墨祭(2018年)~
- 2018.11.05
- 年中行事
今回は、鎌倉・鶴岡八幡宮末社・白旗神社の文墨祭(2018年)をご案内します。
今年2018年の10月28日・午前10時より鶴岡八幡宮内の末社・白旗神社で、文墨祭がとり行われました。鶴岡八幡宮の見解によれば、この日は、白旗神社のご祭神のおひとりで鎌倉幕府三代将軍でいらっしゃる源実朝公が武家として初めて右大臣に列せられた日にあたります(実際には、右大臣・九条良輔が薨去された12月21日(旧暦12月2日)をもって右大臣に就任なさっています)。ご存じのとおり実朝公は、ご自身の家集「金槐和歌集」で知られるように、武家歌人として優れた歌を多く残された方で、「本歌取」をベースとした古今調の雅びな歌だけでなく、後世、正岡子規も高く評価したように万葉調の勇壮でスケールの大きい歌が魅力的です。
大海の 磯もとどろに 寄する波 割れて砕けて 裂けて散るかも
山はさけ 海はあせなむ 世なりとも 君にふた心 わがあらめらも
共に「金槐和歌集」
実朝公は、翌年、右大臣昇任を祝う鶴岡八幡宮拝賀に際して、甥の公暁に暗殺されることになりますが、振り返ればこの右大臣就任の日が、武家の棟梁として実朝公の最も晴れやかな日でありました。
白旗神社の文墨祭は、文人・実朝公を偲び、大東亜戦争のさなか昭和19年より始められ、、書道展や茶会も併せて催されています。
境内の様子
秋晴れの清々しい朝でした。三の鳥居前には、文墨祭の案内も掲げられています。
太鼓橋のまわりは、こんな感じ。
境内には、沢山の参拝客がいらっしゃいました。
舞殿横から大石段にかけての様子です。
鯉が泳ぐ波紋が広がるだけの静かな柳原神池です。
白旗神社の様子
白旗神社では、ご神職が文墨祭の神事の準備を始めています。武家の棟梁を祀る神社らしく、重厚な漆黒の漆塗りの社殿が印象的です。
表千家の御茶席から濃茶が奉納されました。
文墨祭
参殿
斎主以下、ご神職が参殿なさいます。
献饌
様々な供物が神前に並べられます。鎌倉の神社は海が近いこともあり、立派な鯛など海産物が供えられます。
祝詞奏上
斎主による祝詞奏上です。
玉串奉奠
斎主以下ご神職、並びに参列者の玉串奉奠が進みます。
撤饌
祭事が進み、供物が下げられます。
退殿
ご神職が退殿なさいます。楽人の皆さんも続いて退出されます。
御茶席
この日、野点の御茶席は、流鏑馬馬場の西の鳥居側と、白旗神社参道の鎌倉国宝館向い側に、二か所設けられていました。鎌倉国宝館向い側の表千家池田茶席は、こんな感じでした。
書展
文人・源実朝公をお祀りする文墨祭に相応しく、鶴岡八幡宮のご神職の書道師範でいらっしゃる小山渚先生のご一門「渚の会」の書展が開かれておりました。会場は、休憩所二階の直会殿でした。
会場内には、小山先生の書を始め、お弟子さんたちの作品がたくさん陳列されていました。会場内の様子はこんな感じ。
小山先生の作品は、三点目に止まりました。
一番の力作は「春のおとめ」でしょうか。佐藤春夫が「車塵集」の中で、唐代の女流詩人・薜濤の五言絶句を、七五調に訳したもので、小山先生は原詩と訳詩の両方を綴っておられます。
原詩「風花日將老 佳期尚渺渺 不結同心人 空結同心草」
訳詩「しつこころなくちる花に なけきそ長きわか袂 情を尽くすきみをなみ 摘むやうれひのつ九つく志」
おそらく先生の座右の銘?
まるで舞い踊る人を絵にしたような「夢」一文字。
建長寺の吉田正道老師の二隻の屏風です。一双となさったものかどうかは定かではありません。
以下、ご一門の筆で目に留まったものをご紹介します。
西川絆さん。金子みすずの詩「誰がほんとを」。
後藤尚子さん。宋代の禅僧・圜悟克勤(えんごこくごん)の禅語「鶴飛千尺雪龍起一潭氷」。
深美美奈さん。張継の漢詩「楓橋夜泊(ふうきょうやはく)」。
後藤達子さん。戴益(たいえき)の七言絶句「探春(たんしゅん)」
坂本尚文さん。天下泰平の瑞獣「麟鳳亀竜(りんぽうきりゅう)」。
横尾充子さん。大口鯛二の短歌。
ギャラリー
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