鎌倉・大巧寺(だいぎょうじ)◆境内散歩◆
- 2020.06.10
- 境内散歩
「おんめさま」の別称で親しまれる長慶山正覚院大巧寺(ちょうけいざん・しょうがくいん・だいぎょうじ)は、鎌倉駅東口を出て、若宮大路を渡ったすぐ右手にある日蓮宗のお寺です。もともとは十二所・明王院裏手の梶原景時屋敷内にあった「大行寺」という真言宗のお寺でしたが、源頼朝が戦評定をして大勝を得たことから表記を「 大巧寺」に改め、後に日蓮宗に改宗し、改宗した住職の弟子の日澄を開山としました。さらに現在地に移転したのは 鎌倉時代末期の元応二年(1320年)執権・北条高時の時代です。「おんめさま」という別称は、お祀りしている「産女霊神」を「おうぶめさま」と呼び習わしていたものが、さらに訛ったものと考えられます。
◆おんめさま
天文元年(1532年)4月8日の早暁のことでした。大巧寺五世日棟上人は、当時大巧寺の本山であった妙本寺・祖師堂で修される勤経に向かう為にお寺を出て、滑川にかかる加能橋(おそらく現在の夷堂橋)を渡ろうとしたところ、下半身を血に染めて赤子を抱いたとてもこの世の者とは思えぬ姿の女が河原の片隅に立っていました。話を聞くと、この女は大倉の住人である秋山勘解由の妻で、難産の末に死んだまま成仏できずに苦しんでいるとのことでしたので、哀れに思った日棟上人が法華経の提婆達多品と薬王品を女に聞かせてやると、いつの間にか女は消えていました。そして三日後、日棟上人の前に晴々とした様子でその女が現れて成仏させてもらった礼を述べるとともに、供養塔を建ててくれれば世の産婦を守護する旨約し、建立のための金子を置いて姿を消しました。その後日棟上人が、女の夫という秋山勘解由を大倉に訪ねてその旨話すと勘解由はその場で得心して大巧寺の檀家となりました。まもなく供養塔が建立され、その女は「産女霊神」生まれてきた赤子は「福子霊神」として祀られて今日に至ります。
なお大巧寺のご由緒、ご朱印、年中行事、アクセス等につきましては、以下のリンクをご覧ください 。
⇒大巧寺へ
大巧寺の魅力
◎どの季節でも楽しませてくれる色とりどりの花で一杯の境内
◎多くの妊産婦の信仰を集め大巧寺の今を決定付けている産女霊神にまつわる不思議な伝説
◎いつでも気軽に立ち寄れる鎌倉駅に最も近い寺院ならではの至便性
小町大路から境内へ
鎌倉駅から大巧寺に入るには、若宮大路側の山門から入るのが便利ですが、大巧寺の正面は小町大路側の石門となります。鎌倉時代には防衛上の理由で、若宮大路側に門を構えることは禁じられていましたので、若宮大路沿いにあるお寺の正面は全て若宮大路に背を向けています。
左手の題目塔の基礎部には「大巧寺」と彫られています。
参道を少し進んだ左手が、参拝者用駐車場となっています。
正月の写真なので、石門の根元には門松が置かれています。
数多の産婦がその手を浄めてきた手水です。
本堂
大巧寺の御本堂は、一見かわらぶきに見えますが、実は銅板葺きです(まだ十分に緑青は浮き出ていないようです)。棟には、左金輪巴の紋が三つ並びます。
まず正面に見えるのが唐破風の棟鬼飾りです。
こちらは主棟の鬼飾りです。
こちらは、唐破風の軒下で、龍の彫り物が見事です。
こちらは、水瓶(すいびょう)と、庫裏とつながる渡り廊下です。
御本堂の天井板は、一枚一枚に鮮やかな彩色の彫刻が施されています。
日蓮宗の寺院では、一般的に文字で表現した大曼荼羅をご本尊としますが、大巧寺のご本尊は「産女霊神」です。大巧寺が、戦後単立寺院の道を選んだのも、このあたりに理由があるのかもしれません。
庫裏
こちらの庫裏では「安産腹帯守授与所」と掲げているように、産婦向けに安産腹帯、安産御守、戌張子等を授けていただけます。大巧寺は、特定の檀家をお持ちにならない珍しいお寺ですが 、母娘何代にもわたる多くの産婦の皆さんのこうした信仰に支えられています。実は、我が家も30年近く前にお世話になりました。
産女霊神・福子霊神供養塔
御本堂に向かって左脇に、日棟上人が建立した産女霊神・福子霊神の供養塔があります。
山門
若宮大路に面した側にある薬医門は、大巧寺の裏手に位置していますが山門と呼ばれています。日中、ここには4本の紐がぶら下がった竹結界が置いてありますが、これは「結界を解いている」ので「通行してもよい」の意と解釈できます。
山門をくぐると石の参道が続き、御本堂の裏手から南側を回って正面に出ることができます。
四季折々の花
大巧寺の境内は、決して広くはないのですが、鎌倉駅付近に立ち寄ったついでに何の気なしにお参りしても、その都度色とりどりの花々を楽しむことができます。
春の花
春は何と言っても椿です。大巧寺では多くの珍種が栽培されていますが、一本一本丁寧に名称が表示されています。
椿以外にも、様々な花を楽しめます。
夏の花
庫裏の前にあるオクナは、緑の実の部分が黒くなってくると、赤いガクの部分と相まってミッキーマウスのように見えるため、別名ミッキーマウスの木と呼ばれています。これは南アフリカ原産だそうですが、大功寺では普段目にしない珍しい花を、たくさん楽しむことができます。
秋の花
秋にも金宝樹など珍しい花が楽しめます。
冬の花
ウメモドキの実の赤が黄色の皮を破って鮮やかです。
最後までご覧いただきありがとうございました。大巧寺は、鎌倉駅に一番近く足を運びやすいお寺ですので、四季の花を楽しみに是非お参りしてみてはいかがでしょう。
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