鎌倉まつり~流鏑馬(2019年)~
- 2019.04.25
- お祭り
鎌倉まつり最終日の4月21日(日)には、鶴岡八幡宮流鏑馬馬場にて、小笠原流と並び、長くその技を伝える武田流一門(大日本弓馬会系)による流鏑馬神事が奉納されました。 小池義明師範により 社務所前で奉納された「天長地久の儀」に続き、二組に別れた射手が、「天下泰平(てんかたいへい)」「五穀豊穣(ごこくほうじょう)」「万民息災(ばんみんそくさい)」を祈念しつつ、 流鏑馬馬場の南側に並べられた三つの的を騎射(きしゃ) にて次々と射抜いて行きます。鶴岡八幡宮では、年三回・流鏑馬が奉納されますが、春の鎌倉まつりでは武田流が、秋の例大祭と崇敬者大祭では小笠原流がそれぞれお務めになります。
武田流「流鏑馬」の歴史
「流鏑馬」の起源は、6世紀の宇佐八幡宮にまで遡りますが、現代に続く武田流・小笠原流は、9世紀末に宇多天皇が定めた「弓馬の礼法」が源氏嫡流を経て、源義家の舎弟・新羅三郎義光より別れた両家に伝えられたことに始まります。そのうち、武田流については、江戸時代に武田家から熊本藩主・細川家に伝わり、その命により家臣の竹原家が代々その流れを守ってきました。明治以降、様々な経緯から武田流は次の三系統に分かれています。第一に細川家の直接の流れを汲む熊本の「武田流騎射流鏑馬保存会」、第二に細川家より相伝を受けた金子有隣氏の四男・家教氏の流れの「社団法人大日本弓馬会」(武田流弓馬会)、第三に金子有隣の六男・家堅氏の流れの「日本古式弓馬術協会」(武田流鎌倉派)がそれです。
「流鏑馬」スケジュール
「流鏑馬」会場図
境内の様子
この日は、お天気も良く気持ちのよい一日でしたが、ほとんどの時間帯で流鏑馬馬場を横切るあたりで中央通路が閉鎖されているため、三ノ鳥居から本宮にお参りするには、う回路を通るしかありません。
流鏑馬馬場の「馬場元」にある東鳥居と「馬場末」にある西鳥居とは武田菱の陣幕で閉鎖されていました。
旧神奈川県立近代美術館の建物をリニューアルした鎌倉文華館が6月8日の開館に先立ち4月20日から5月6日まで建築公開中です。芝生が根付けば、青々とした芝生に白亜の建物が映え、さらに美しい姿を見せてくれると思います。
武内社(たけうちしゃ)例祭
この日は、鶴岡八幡宮の境内末社「武内社(たけうちしゃ)」の例祭が執り行われていました。武内社の御祭神は、本宮御祭神の一柱・神功皇后に仕えた功臣「武内宿禰命 (たけうちのすくねのみこと)」で、神功皇后に寄り添うように本宮社殿の西側に隣接して祀られています。
本宮・大石段上からは、遠く一の鳥居まで見通せます。
馬慣らし
流鏑馬馬場では、午前中から「馬慣らし」が行われていました。装束を身に纏う前の射手の皆さんが馬を駆けさせます。中には鏑矢を射る方もおられます。
出陣・鏑矢奉納願文奏上の儀
寄せの太鼓を合図に、射手及び諸役が社務所前に集合し、修祓が行われる祓戸に向かいます。その後、舞殿にて「鏑矢奉納願文奏上(かぶらやほうけん・がんもんそうじょう) の儀」が執り行われます。
天長地久の式(てんちょうちきゅうのしき)
射手・諸役は舞殿より社務所前に戻り、騎乗した小池義明師範が、左に3回、右に2回、馬を乗り回す「五行の乗法」を行います。馬を止めた後、鏑矢をつがえた弓を天と地に向け満月に引き絞る所作を行い、「天下泰平(てんかたいへい)」「五穀豊穣(ごこくほうじょう)」「万民息災(ばんみんそくさい)」を祈念します。
馬場入り
「序の太鼓(じょのたいこ)」が打ち鳴らされる中、天長地久の儀を終えた射手・諸役は馬場に向かいます。
ご神職は的の前等で御祓いをしながら進み、諸役は所定の位置に付きます。騎乗した射手は一旦馬場末に向かってから折り返し、スタート地点となる馬場元を目指してゆったりと歩を進めます。
「鬼面綾桧傘(きめんあやひがさ)」を被り、左手には「重藤の弓(しげとうのゆみ)」を持ちます。佩刀には毛皮の「鞘尻(さやじり)」が被せられ、腰には夏毛の鹿革でできた「行縢(むかばき)」を巻きます。
諸役の配置
記録所
二の的の前に設けられた櫓に、流鏑馬神事の総指揮を執る「奉行」と、太鼓を叩き合図を送る「太鼓方」が登ります。櫓の前には、紅白の幟と共に「旗持ち」が控えます。
馬場元・馬場末
馬場元・馬場末には各々、扇を翻して発馬の合図を送る「扇方」が控えます。
一の的・二の的・三の的
三カ所に設けられた的に、各々、的中判定と的の架替えを行う「的目付」、 幣を振って命中を知らせる「幣振」、 矢を拾い上げ射手に返却する「矢取」 が配置されます。
中央通路脇
黒のパンツスーツ姿の「ミス鎌倉」の皆さんも、配置についていらっしゃいます。
騎射
素馳(すばせ)
「破の太鼓」を合図に、扇方は馬場の安全を確認し、扇を振ります。最初は、矢を射ずに馬場元より馬場先まで馬を走らせ馬を馴らす「素馳(すばせ)」です。 馬場先からは列を組んでゆっくりと返します。
奉射(ほうしゃ)
続いて二組に別れた射手が各組二回づつ奉射します。各組とも奉射の一回目は同心円状にカラフルに色分けた「式の的」、二回目は板をひし形に切った「板的」を使います。奉射では的の上に花束を飾り付けており、そちらに当たっても命中と判定されます。
競射(きょうしゃ)
最後は競射で、紙吹雪を二枚の土器で挟み込んだ「土器三寸の的」を射ます。こちらには奉射で命中率の高かった者のみが参加できます。なお、競射は神事ではなく競技であることから、桧傘から鬼面を外して臨みます。
凱陣の式(がいじんのしき)
「止の太鼓(とめのたいこ)」により競射を終え、「凱陣の式(がいじんのしき)」が行われる舞殿に移動します。
舞殿の「凱陣の式(がいじんのしき)」 には、首実検の意が込められており、最多的中者の的を奉行が検分します。その後、太鼓方は陣太鼓を三打し、「勝鬨(かちどき)」を上げます。
直会(なおらい)
射手を始めとする関係者に御神酒が振舞われた後、一同退下します。
流鏑馬に奉仕した馬は、東鳥居から馬運車に乗り帰って行きます。
鶴岡八幡宮・春の花々
すっかり暖かくなった鶴岡八幡宮の境内は、躑躅と藤がとてもきれいでした。
最後までご覧いただきありがとうございました。 鎌倉まつりの最後を飾るにふさわしい勇壮な流鏑馬を、今年は好いポジションで拝見できて満足してます。
-
前の記事
鎌倉まつり~庖丁式(2019年)~ 2019.04.22
-
次の記事
鶴岡八幡宮・丸山稲荷社~例祭(2019年)~ 2019.04.28
コメントを書く