輪王寺・大猷院付近~紅葉の日光遠征記2018(その5)~

輪王寺・大猷院付近~紅葉の日光遠征記2018(その5)~

「紅葉の日光遠征記」第五回目の今回は、輪王寺で今が一番「旬」の「大猷院(たいゆういん)」とその付近の様子をご紹介します。大猷院は、江戸幕府・三代将軍徳川家光の霊廟ですが、同時に歴代の徳川将軍の位牌が安置された徳川将軍家の霊廟としての役割も果たしてきました。
大棟梁・平内大隅守応勝の手に成るこの名建築は、国宝に指定される権現造の本殿・拝殿・相の間を始め、主要建築物が全て重要文化財に指定されています。
後世の我々から見ると、ある意味、東照宮以上に贅を尽くした造りにも見えますが、実は、東照大権現という神格を得た家康公をお祀りする神社としての東照宮と、将軍とはいえあくまで「人」である家光公を弔う「廟」(道教色はあまり見られないため菩提寺と云ってよい)としての大猷院との差を明確に意識した造りとなっています。例えば、色の組み合わせは、東照宮が金と白(胡粉)を基調とした輝きが強調されているのに対し、大猷院では赤み掛った金と黒(漆)という重厚ながらも控えめな色合いとなっていますし、軒下の組物などは、東照宮が最高四手先であるのに対し、大猷院では三手先までとするなど、一歩引いた仕様となっています。

大猷院エリアの場所

きれいな境内絵図が輪王寺のサイトにありましたので、リンクさせていただきました。この境内図の中心より左側が大猷院のエリアとなります。このエリアには、大猷院の他、東照宮以前からある常行堂と法華堂の「二つ堂」、天海大僧正の墓所がある慈眼堂などが含まれます。

二つ堂(常行堂と法華堂)

慈覚大師・円仁和尚が、比叡山を模して常行三昧・法華三昧の行を修する場として建立したものと云われています。もともとは、現在の東照宮の場所にありましたが、東照大権現を久能山より日光に遷葬した際に、現在の場所に移築されました。

常行堂

連子窓の純和風建築で、組物は三手先です。ここでは阿弥陀経を唱えながら御本尊の周りを歩き続けるという「常行三昧(じょうぎょうざんまい)」の行のため、御本尊の周囲に板敷を設けています。

御本尊は阿弥陀如来で、天台宗の四菩薩(金剛法菩薩・金剛利菩薩・金剛因菩薩・金剛語菩薩)が周囲を取り巻いています。何れも孔雀坐に乗っており、非常に珍しい様式です。

輪王寺サイトにリンク

また、摩多羅神像も安置されています。

輪王寺サイトにリンク

こちらでは「阿弥陀如来」のご朱印を頂けます。

法華堂

何となく常行堂に似ていますが、こちらは火灯窓を用いた純唐風の建物で、少し小振りです。組物も二手先と、ワンランク下がります。御本尊は普賢菩薩で、左右に鬼子母神、十羅刹女が祀られています。こちらも「法華三昧(ほっけざんまい)」の行のため、御本尊の周囲に板敷を設けています。

渡り廊下

常行堂と法華堂は、渡り廊下で繋がれています。

渡り廊下の中央は切断され通路が横切っており、その先には天海大僧正の墓所がある「慈眼堂」に向かう「延命坂」が続いています。

大猷院

ここから、いよいよ大猷院です。境内の配置はこのようになっています。

入口付近

「二つ堂」を左に見て先に進むと、大猷院の入口が見えてきます。

大猷院の寺銘碑です。

受付で拝観料を納め、同時にご朱印帳を預けます。

ここでは「大猷院」のご朱印と「金閣殿」のご朱印(書置き)を頂けます。

仁王門(重要文化財)付近

最初に見えてくる門は、仁王門です。門も仁王様も鮮やかな朱色が目立ちます。十二分に立派な門ですが、二天門あたりと比べるとこれでも地味・・・。

右側が阿形の密迹金剛(みっしゃくこんごう)様です。

左側が吽形の那羅延金剛(ならえんこんごう)様です。

仁王門を入った左手には「宝庫」(重要文化財)があります。

仁王門の正面には「御水舎(おみずや)」(重要文化財)があります。水に強い立派な御影石の角柱12本で支えられ、天井には狩野永真安信の龍が描かれていますが、残念ながらあまりよい保存状態ではありません。

「御水舎」の脇には、家光公を継いだ四代将軍・徳川家綱公御手植えの槇の木が今も元気です。

二天門(重要文化財)

今年(平成三十年)5月に大修理を終え公開されたばかりの色鮮やかな二天門です。下段が「朱」、中段が「黒」、上段が「群青」「緑」「朱」「青」と三段階に塗り分けられており、組物は三手先です。正面に向かって左には持国天、向かって右には広目天が安置されていますが、以前は裏側左右に風神像、雷神像が置かれ「雷門」とも呼ばれておりました。今回の修理を機に両者とも宝物館に移されたため、裏側が少し寂しくなりました。

広目天
持国天

(※サムネイル画像をクリックすると拡大します。)

竜光院(重要文化財)

二天門をくぐって少し上った展望台からは、大猷院霊廟の別当が置かれていた竜光院と、十万石未満の大名が献納した石灯籠がずらりと並んでいるのが見えます。

鼓楼・鐘楼(共に重要文化財)

展望台をさらに上がると、左に「鐘楼」が見えます。

右には「鼓楼」があります。「鐘楼」と対になっているのは、禅寺に見られる唐風の様式です。

夜叉門(重要文化財)

「鼓楼」と「鐘楼」の間、真正面には「夜叉門」が見えます。「夜叉門」は、組物こそ二手先ですが、華麗な牡丹唐草模様が美しい禅宗様の門です。門の左右裏表には計四体の夜叉「毘陀羅(びだら)」「阿跋摩羅(あばつまら)」「犍陀羅(けんだら)」「烏摩勒伽(うまろきゃ)」が置かれています。

(※サムネイル画像をクリックすると拡大します。)

また、この付近には十万石以上の大名が献納した唐銅の灯篭が並んでします。

唐門(重要文化財)

他の諸門と比べると小さ目ですが、総金張りの柱を含め精巧な金細工に埋め尽くされています。

拝殿・相の間・本殿(国宝)

拝殿・相の間・本殿が一体となった権現造を黄金と黒漆で覆い尽くす豪華かつ重厚な威容は、まさに国宝級です。

相の間&本殿

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建物の内部も、拝殿の天板一枚一枚に丁寧に描かれた龍や壁絵の唐獅子、相の間の鳳凰に昇龍と降龍と、どこを向いても隙なく装飾で埋められています。家康公ご位牌が公開された際の、本殿の写真が輪王寺サイトにありましたのでリンクさせて頂きました。

皇嘉門(重要文化財)

本殿横の棟門を潜り、正面を見上げると竜宮造と呼ばれる明朝風の「皇嘉門」があります。この奥に家光公の墓所と拝殿がありますが、非公開となっています。

慈眼堂

古くからの聖地・日光山に東照大権現を融合させ、現在に繋がる日光山の枠組みを創った慈眼大師・天海大僧正の墓所があります。
「二つ堂」の間から延びる「延命坂」を上ると山門の脇に出ます。

「山門」は、こんな感じ。

「拝殿」(重要文化財)は裏側にも扉があり、拝殿裏の天海大僧正の墓所を直接拝することができる構造になっています。

「拝殿」に向かって右側に「鐘楼」(重要文化財)と「天海蔵」(重要文化財)が見えます。

「拝殿」に向かって左側に阿弥陀三尊の石像を納めた祠が見えますが、これが「阿弥陀堂」(重要文化財)です。

紅葉もいい色に染まっています。

「拝殿」に向かって左奥に石段があり、この先には歴代輪王寺宮の墓所があります。

慈眼堂の敷地の外に、お堂が二つありましたが、調べてもよくわかりません。ご存じの方がありましたら教えてください。

大猷院ライトアップ

丁度、私が日光を訪れた日に、大猷院のライトアップイベントがあり、昼間とは一味違う大猷院の姿を楽しむことができました。

夜叉門

(※サムネイル画像をクリックすると拡大します。)

ライトアップイベントにあわせて、受付で「持国天」「広目天」の書置きのご朱印を拝受しました。

最後までご覧いただきありがとうございました。東照宮に隠れてもう一歩目立たなかった輪王寺ですが、最近の大修理によって、そのすばらしさが再認識されてきているように思います。また、天海大僧正については、いろいろと面白い話がありますので、また折を見て投稿させていただければと存じます。