仏日庵(ぶつにちあん)◆鎌倉・円覚寺・境内散歩◆

仏日庵(ぶつにちあん)◆鎌倉・円覚寺・境内散歩◆

鎌倉三十三観音霊場第三十三番「結願の札所」の仏日庵(ぶつにちあん)は、円覚寺開基・北条時宗公をお祀りする旦那塔です。この場所には、もともと時宗公が禅修行をした庵があったご縁から時宗公の「開基廟(かいきびょう)」が置かれ、円覚寺境内では開山・無学祖元を祀る開山堂と並び別格の扱いを受けていましたが、北条得宗家滅亡後は次第に衰微していました。しかし、天文年間(1532~55年)に「鶴隠周音(かくいんしゅういん)」の中興により塔頭となったことで経済的基盤も整えられました。

なお仏日庵のご由緒、ご朱印、年中行事、季節の花々、アクセス等につきましては、以下のリンクをご覧ください。
⇒仏日庵

※写真をクリックすると拡大します。

仏日庵の魅力

◎兎にも角にも達成感がうれしい鎌倉三十三観音霊場・結願の札所

◎下り坂にあっても其々に個性が光る北条得宗家末期の三代(時宗・貞時・高時)を偲ばせる開基廟

仏日庵の位置

円覚寺・総門から、仏殿西側の参道をずっと奥に進んだ突き当りにあります。かなり手前からご本堂の屋根が目立ちます。

参道から見た仏日庵

総門を入り、桂昌庵あたりから続く石畳をまっすぐ歩くと正面に見えるのが、仏日庵のご本堂の瓦屋根です。紅葉の頃は、こんな感じ。

仏日庵の山門前の様子は、こんな感じ。

山門前から上手を見遣ると、突当りが「黄梅院」です。

ご本堂の四季

仏日庵ご本堂の瓦屋根は、季節の移ろいを映す鏡のようです。

桜の頃


桜の頃

盛夏


盛夏の葉桜

晩秋


紅葉の頃


白雪舞う頃

山門付近

山門は、開基廟の正面にあり、普段は閉じられています。

入口は、この左手にあり、拝観料100円を納めます。グッズもいろいろ販売しています。

開基廟

山門正面のこちらが「開基廟」で、建物の下の石櫃には北条時宗・貞時・高時の北条得宗家三代の御遺骨が安置されているとのことです。昔は北条時宗公の廟とは別に、妻の覚山尼、貞時公、高時公の廟がありましたが、今は「開基廟」に合祀されています。

仏日庵・開基廟

廟所向かって右には、時宗公が信仰していた十一面観音坐像(鎌倉観音霊場第三十三番札所本尊)、正面には木造北条時宗坐像、左手には北条貞時公及び高時公の坐像が安置されています。

廟内の様子
十一面観音坐像(鎌倉三十三観音霊場・第三十三番札所本尊)
仏日庵サイトにリンク
北条時宗公坐像

御本堂

御本堂は、山門に向かって左手にあります。

御本堂内は、こんな感じ。正面が、鎌倉二十四地蔵尊霊場第十四番札所本尊の延命地蔵尊坐像、向かって右手が、仏日庵・中興の
木造鶴隠周音坐像です。

延命地蔵様は、まるで観音様のように表情が穏やかです。手の仕草も優雅で、蓮華座にゆったりと座っていらっしゃる姿は、拝見していて心が落ち着きます。

仏日庵・延命地蔵尊(仏日庵サイトにリンク)

茶室・烟足軒(えんそくけん)

「烟足軒(えんそくけん)」は、中興「鶴隠周音(かくいんしゅういん)」の隠居所として建てられたものです。現在は茶室として使用されており、 時宗公の御命日(4月4日)と十月の月命日(10月4日)の年二回行われる茶会「四月会」の会場の一つにもなっています。また、川端康成の戦後の代表作「千羽鶴」でのお茶会の舞台としても知られています。なお、烟足軒前の枝垂れ桜は、大佛次郎夫人より贈られたものだそうです。

仏日庵・烟足軒(えんそくけん)

ものさし・尺杖(しゃくじょう)

仏日庵では「ものさし」と呼んでいるようですが、所謂「尺杖(しゃくじょう)」です。一尺(約30cm)毎に墨で目盛を振られた大きな建築用の物差しで、柱や梁など大きな用材を切りそろえる際に長さを計るために使用されます。 仏日庵の尺杖は、天明年間(1781~88年)の円覚寺山門建立に際して使用されたもので、長さは四十八尺(約14.4m)もあります。

仏日庵「 尺杖(しゃくじょう)」(軒下に格納されている角材です。)

お抹茶

拝観者が少ない日などは抹茶(500円)をいただき、ご本堂の縁に腰かけて苔庭を眺めてみるのも風流です。

境内の花木

境内では、季節毎の花や木々が楽しめます。こちらは開基廟左前の「臥龍梅」と名付けられた梅の木です。花はもちろん枝振りだけでも楽しめます。

臥龍梅

こちらの「白木蓮」と「泰山木」は、何れも小説「阿Q正伝」で有名な中国人小説家・魯迅より贈られたものです。

白木蓮(中国小説家・ 魯迅より寄贈)
泰山木(中国小説家・魯迅より寄贈)

こちらは「多羅葉」です。インドには、鉄筆で葉の裏に字を書き墨を染込ませることで、紙のように経文を記述保存できる「多羅樹」 という木がありますが、日本の寺院でも「多羅樹」と同じように葉の裏に経文を書く目的で「多羅葉」が植えられていました(何とこちらの方は墨を染込ませなくても文字が残ります)。郵便で使用される 「葉書(はがき)」という名称は、この「多羅葉」 の葉に文字を書いたことに由来して、郵便の父・前島密が命名したものです。

多羅葉

こちらは、お茶の香り付けに使用されていた「唐種小賀玉
(からたねおがたま) 」です。6月にはクリーム色の厚手の花が咲くそうです。

唐種小賀玉(からたねおがたま)

他にも、いろいろな花が楽しめます。

あじさい
蓮(花がなくて申し訳ありません)
シュウメイギク
酔芙蓉(すいふよう)

最後までご覧いただきありがとうございました。円覚寺には、建長寺より多い十七もの塔頭がありますが、仏日庵は鎌倉三十三観音霊場及び鎌倉二十四地蔵尊霊場の札所となっていることもあって、参拝客の多い塔頭です。